私達の祖父でもある宇井忠もまた、辰巳屋惣兵衛同様に無類のお祭り好きでございました。娘の和甫が第1回の舞踊会を開催した時には早朝より花火を打ち上げて、町中を巻き込む大賑わいとなりました。その心意気を大切に守り、宇井忠の17回忌には、母が浅草の老舗「宮本卯之助商店」に依頼して「宇井忠」の名を入れた神輿を一基、故郷の千葉県八日市場市へ寄贈させていただきました。 また私達は幼い頃より母から常に「舞踊会はお祭り」と教えられてきました。誰が誰より上手も下手も関係ない、舞台に上がるまでの日々の努力に価値があるのだから、舞踊会当日はお祭りの気分で楽しく、気持ちよくみんなが過ごせることが一番大切であるということでした。踊る人も観る人も楽しい舞台、それが私達辰巳流の原点にあるのです。 お稽古が終わった時のにっこりとした楽しそうなお弟子さんの笑顔、舞踊会の舞台の幕が下りた時の充実感、満足感を味わっているお弟子さんの笑顔。私達はそんなたくさんの笑顔に囲まれて今日を迎えています。